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2016.11.24

氏より育ち

ちょっと古いニュースになるのだけれど・・・、

・日本ハム・栗山監督 斎藤の再生について「もう少し時間をください」
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20161115-00000028-tospoweb-base

ドラフト1位の選手だからという事情は、勿論あるんだろうけど・・・大卒という事で、ある程度の即戦力が求められる投手が、6年間結果が出ていない(しかも、年々成績が落ちている)現状は、正直崖っぷちと言っても良いレベルだと思う。

でも・・・この、
「育っていない斎藤投手を、いかに育てるか?」
は、テーマとして、とても面白いと思う。

監督という立場である以上、戦力の全てを使って戦うのは当然で・・・結果が出ていなくても、結果を出すように考えるのが仕事だからだ。
(僕も畑は違うけれど、同様の職種ではあるので、理解・共感出来る)

栗山監督の言う所の「時間を与える」とは、記事にもある通り、一軍で数を投げさせる事だとは思うのだけれど、僕も基本的に似たような事を考えていた。

彼の基本的なピッチングスタイルとしては、技巧派に属すると思う・・・と言うか、そうならざるを得ない。
誤解を恐れずに書けば、これといった球種がある投手では無いからだ。

栗山監督の
「斎藤よりもスピードがあるピッチャーはたくさんいる」
も、同じ意味だろう。

技巧派は、打者との駆け引きで抑えるのが全てなので、いわゆる「試合勘」が重要になる。
当然だけれど、これは試合に出る事によって、培われ&磨かれる部分で・・・更に言えば、1軍の試合(=実戦の中)でしか、感覚として得る事が出来ない。

なので、
「先発投手の6番目として、勝ち負け関係無く、1年間投げさせる」
くらい思い切った配置を行わなければ、ある程度の結果を残す事は出来ないと考えていた次第だ。

でも、それが悠長に出来る程、ファイターズ投手陣の層は薄くないし、そうで無ければ、ペナントレースを勝ち抜ける訳が無い。
その意味で、入団して間もない時期ならともかく、今では無理矢理使う訳にもいかないだろう。
(贔屓と見られてしまえば、逆にチームのムードが悪くなるだろうし)

何よりも・・・それより大きな(難しい)問題だと思っている事がある。
彼の性格だ。

あくまでも個人的な印象だけれど、彼はポジションを勝ち取るタイプでは無く、与えられたポジションで力を発揮していくタイプ・・・栗山監督の言葉を借りれば、彼は「絶対に何とかしないといけないと感じた」経験その物が少ないのでは無いかな、と考えているからだ。

例えば、同じチームの他人を押しのけていこうとか・・・彼は経験的に、選ばれる事はあっても、勝ち取った=競争の経験が少なかったのでは無いかなと感じている。
道を切り開いて進むタイプでは無く、決められた道を上手く走るタイプ・・・一軍で数を投げさせるという意味は、ここにもある。

その意味で言えば、(悪い意味では無く)あくまでもタイプの話なのだけれど・・・こういった人間は、メインストリームを外れた際に復帰するのが難しい。

栗山監督は、
「本人も絶対に何とかしないといけないと感じているので」
と(本人が語った事として)書いているけれど、僕はこの言葉を信じていない。
何とかしないといけない事を感じていても、先に書いた経験の少なさから、具体的にどうすれば良いかが見えていないのでは?と思うからだ。
本人が変わろうと心の底から思えなければ、まず変わらない部分で・・・そこを上手く指導出来るかと言えば、これが難しい。

キツい言い方をすれば、お坊ちゃん体質と言えなくも無い(苦笑)けれど・・・実際そういった人は少なく無い。
と言うより、能動的に何かを変えていく事は、本来とても難しい訳で、そんな人間をいかに扱っていくか・・・同じ悩みを持つ人にとっては、大いに参考になると思う。

斎藤投手と言えば・・・やはりマー君を引き合いに出さなければいけないだろう。
彼を初めてTVで見た時、プロ向きの性格だなぁと感じた印象は、現在の活躍で裏付けられた・・・と言うか、それを遙かに超えた選手になっている。

斎藤投手が、今の立ち位置に甘んじているのを良しとしているのか・・・良しとしているのであれば、恐らく彼はここで終わってしまうと思う。
今、活躍出来ていないという事は、やり方が間違っている訳で、(自分を否定して)やり方を変える必要があるし、それによって周りを認めさせて、自分好みの環境を作っていく・・・でも、それは自分の気持ち次第という事になると思う。
・・・ベースボールマガジン社の社長から、ポルシェもらってる場合じゃないでしょ?(笑)

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2016.11.11

読書の秋(長め)

前々から興味があった本だったので、他の本と合わせて購入して・・・一気に読んでしまった。(笑)

本の帯(この写真)には「人工知能」とあるけれど・・・それを含めてコンピュータ将棋に関して、それぞれの棋士を立ち位置別(ソフトを活用している人・しない人・電王戦等で負けた人といった具合)に分けてインタビューしている。
著者であり、インタビュアーでもある大川慎太郎さんは、将棋の観戦記者としても経験のある方でもあるし、(恐らく)読者の知りたいポイントを、それぞれの棋士に応じた内容でまとめてくれていて、読みやすいながらも、非常に興味深い内容になっている。
(特に、皆が聞いてみたいであろう、羽生三冠の見解も知る事が出来る)

読んでみて一番感じたのは・・・現役の棋士達と、ネットニュースや、そこで見かける一般のコメントとを比べると、現状の認識に結構な違いがあるなぁ、という事だ。
それは・・・コンピュータ将棋との向き合い方だ。

一般の人の多く(特に、将棋に馴染みの無い方)は、プロ棋士を負かす程の強さを持つ現在のコンピュータ将棋を、「黒船襲来」といったイメージで捉えていると思うけれど、プロ棋士達は、例外無く、
「既にコンピュータ将棋がそこにある世界」
で、とっくに戦っている事実がある。

これは、当事者かそうでないかの違いでもある訳だけれど、出来事を点と線でどう見ているかの違いだ。
棋士達は、それぞれの視点で、ターニングポイントこそ違う物の、繋がった歴史として捉えている(注1)事が、この本を読むと良く分かる。
コンピュータその物に免疫のある若い棋士は、既にかなり取り入れているらしいという話も出てくるし、そこで発見された新しい手が実戦に出てくる話もある。

コンピュータ将棋が、もの凄いスピードで近付いてくる音を認識(注2)しながら、どう付き合い・向かい合うかに関して、肯定/否定する面を含めて様々だけれど、棋士それぞれの見解としてキチンと語っている。
これで分かる通り、現在進行形として、棋士達は既にコンピュータ将棋との勝敗を超えた所にいる事が分かる。
そしてそれは・・・棋士とコンピュータ将棋の強さを比較しても、根本的に意味が無いという事でもある。

人はミスを犯す物だけれど、コンピュータはミスをしない。
いや・・・もっと正確に表現すれば、人のミスはポカ(=失敗)であり、コンピュータのミスはバグか仕様である、という事になる。

コンピュータは作られた以上の事はしない・・・決してミスをしないからだ。
逆に言えば、作られた範疇での動作であれば、100%それを行う事を意味している。

本書の中で、何人かの棋士が言及しているけれど、そういうコンピュータ将棋に勝つ為には、それを理解して、そこを突く・・・人とは全く違う戦い方をしなければならない。
(実際に、過去の電王戦の中で、そうした仕様を利用して勝利した棋士もいる)

そんな「物」と対戦・勝利する事に対して面白みを見出す事は、将棋を知っている人間である程、難しいだろうと思う・・・人との違い(というより「違和感」)を、より意識する事に繋がるからだ。
プロという人種であれば、尚更だろう。
(実際に対戦相手として使用する事はほとんど無く、詰みのある/なしの判定だったり、あくまでも研究のサポートツールとして使っているそうだ)

ところで、今本戦に入っている第2期叡王戦(優勝者が来年春に電王戦で、コンピュータ将棋と戦う事になっている)は、いよいよ大詰め・・・次が準決勝(今週末→明けにかけて行われる)なんだけれど、なかなか面白い顔ぶれになっている。
(コンピュータ側は、将棋電王トーナメントを連覇して、現在最強と言われている「Ponanza」が決定している)

千田翔太(五段)
コンピュータ将棋の活用において、一番有名な棋士。
コンピュータと同じ差し方を目指して強くなろうとする、異色な存在でもある。
本書にも登場。

豊島将之(七段)
「関西若手四天王」の1人に数えられる、実力者。
第3回将棋電王戦でコンピュータ将棋(YSS)を破っているし、今期はJT将棋日本シリーズで、佐藤天彦名人を破って優勝している。
余談だけれど、僕と出身(一宮市)が同じ。

佐藤天彦名人(九段)
「貴族」のあだ名を持つ・・・リップクリームを塗ってから投了するエピソード(=リップ投了)でも有名。(笑)
だけれど・・・史上四番目の速さで、今期羽生さんを破って名人に就いた、今一番乗っている棋士の1人。

丸山忠久(九段)
ある意味、今一番「旬な」棋士。
今、将棋界を揺るがす問題となっている竜王戦の繰り上げ挑戦者だけれど・・・現在、2勝1敗で勝ち越している。
カロリーメイトを食べながら投了したエピソード(=モグモグ投了)や、対局中にヒエピタを貼った事(=ヒエピタ流)でも知られている。(笑)
名人経験者。

そして・・・、

羽生善治三冠(九段)
僕が説明するまでも無いので、それは省略。(笑)
本戦トーナメントでは、山崎隆之(初代)叡王を破って、ここまで駒を進めている。(注3)

ハッキリ言って、誰が優勝しても、電王戦に挑む棋士としては素晴らしいと思う。
対コンピュータ将棋と言う点において実績のある、千田五段・豊島七段。
実現すれば、名人として電王戦を戦う事になる、佐藤名人。
竜王戦の繰り上げ挑戦者に決まった時、連盟の決定に(ほぼ唯一と言って良い)苦言を呈した、丸山九段。
一般の人を含めて皆が待ち望んでいる、最高のカード(期待感含めて)になる、羽生三冠。

と言うか・・・個人的には、こうやって書いてきて、既に答えが出ているような気がしている。
プロ棋士が戦う事その物の楽しさ、素晴らしさは、まだまだコンピュータ将棋には出す事が出来ない。

コンピュータ将棋が本当の意味で人を超える為には、エンターテインメントを理解しなければならない・・・正直に言えば、今はまだまだプロ棋士の力を借りて行う「見世物」に過ぎない訳で、単純にコンピュータ将棋が強いからと言って、プロ棋士の魅力が損なわれる事は、決して無いと思う。

だって・・・こうやってサラッと書くだけでも、魅力的な棋士ばかりで・・・メチャメチャ面白そうな感じがするでしょ?(笑)


注1:以前に書いた事があるかもだけれど、コンピュータ将棋は、2005年6月に生まれた「Bonanza」(僕も当時インストールしていた)が、大きなブレイクスルーの役割を果たしている。
簡単に言ってしまえば、それまでのコンピュータ将棋が採用していなかった思考ルーチンを、コンピュータチェスを応用して採用し、膨大な棋譜から評価関数のパラメータを自動生成するようにした事で、開発者の主観を排した形での機械学習が可能になったというのが、大きな特徴となる。
(Bonanza以前のプログラムでは、開発者にもある程度の棋力が求められていたのだけれど、これらの発明により、その必要が無くなった)
「Bonanza」は、ソースコードも公開された為、これに大きな刺激を受けた人達によって様々な開発が為され、今に至っている。
その意味で、現在強豪とされているコンピュータ将棋のほとんどが、何らかの影響を受けている。
と同時に、それを支えるハードの進歩によって、急速に発展してきたのが、コンピュータ将棋の歴史であると言える。

注2:本書にも出ているけれど、強さの指標の1つに「レーティング」という数値がある。
これは、プレイヤーの強さを数値化した物になるだけれど、コンピュータ将棋(のいくつか)は、既にプロ棋士の数値を超えていると言われている。
但し、チェス等で採用されている物の、将棋連盟では採用されていないので、あくまで非公式な計算による物だし、レーティングの対象=採用する棋戦によっても違ってくる可能性は残されている。

注3:佐藤名人と丸山九段は、準々決勝で対決して、勝者がその日の夜に羽生三冠と準決勝として対戦する事になっている。
(なので、もう一方の準決勝は、千田五段vs豊島七段で行われる)
インターバルが余り無い中での連戦となると・・・単純には羽生三冠絶対有利となるけれど、さてどうなるか。
それにしても、リップ投了vsモグモグ投了って。(笑)

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